新しい車

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少し前の夏の終わり、車が故障して新しい車を買いに行きました。
右がこれまで、左がこれから僕たちを運んでくれる車。

20年前に僕が初めて車を買った頃、地球はまだみんなのものでした。
なので僕は自由に好きな所に車を止めていました。

ところがある日、
「ここに車を駐めないでください」と書かれた紙がフロントガラスに貼られていました。
僕はそれを誰かのわがままだと思ってそこに駐め続けました。

すると今度は、
赤い三角コーンが2本、車を止めていたスペースに置かれるようになりました。
それでも僕は三角コーンをのけてそこに車を駐め続けました。

するとある朝、
三角コーンはツノみたいに僕の車の上に立っていました。
その日から三角コーンは何度遠くへ運んでも翌朝には僕の車の上に立っていました。

そんな不思議な毎日が続いたある朝、
その日は車の上に三角コーンが立っていませんでした。

どうしたのかと思って近づいてみると、
なんと車の上に煮魚が乗っていたのです。

僕は煮魚を乗せて警察へ相談に行きました。
驚いたことに、間違っているのは煮魚ではなく僕の方でした。
もう地球はみんなのものではなくなっていたのです。


[ある土地に囲いをして、「これはおれのものだ」というのを最初に思いつき、
それを信じてしまう単純な人間を見つけた人こそ、政治社会の真の創立者であった。 
ジャン=ジャック・ルソー 人間不平等起源論]


保育園からの帰り道、娘は森の中の美しい場所を見つけると
「今度ここにお家を作ろうよ。」
と言います。
「そうだね。今度ね。」
と僕は言います。