「お父さん死なないでね」と娘が毎日のように言う。
そして僕はおじいちゃんのような気持ちになる。
今日も世界中のおじいちゃんやおばあちゃんが亡くなっていく。
そんな日々の中で「kings final hours」という老衰するライオンの記録を読んだ。
https://travelguideandphotography.com/2018/04/23/the-death-of-a-king/
僕がこのライオンだったら何を思うだろう。
ちょうどおじいちゃんの気持ちになっていた僕の心が揺れた。
僕はこの感情の揺れる瞬間を何百日も何千日も浮きを見つめる釣り人のように待っているのだ。
浮きが沈み僕は無意識の底へと降りて行った。
「お父さん死なないでね。」
という娘の声が聞こえる。
無意識の底にパッと光が走り僕はそれを一気に釣り上げる。
僕は子どもたちを描きたくなった。
次々に描きたくなった。
自分の子どもだけでは足りずクラスメイトも何十人も描いた。
子どもたちが元気でなければおじいちゃんになった僕は安心して地面に帰ることが出来ないのだと、
絵を描いているうちになぜ自分がそれを描いているのか少し分かったような気がした。
大きな絵を描くのは2年ぶり。
一生を終えるまでにあと何回このサイズの絵に向き合えるだろう。
「お父さん死なないでね。」
と今日も娘は言う。
6月18日- 7月22日 池平徹兵 展
H.P.FRANCE WINDOW GALLERY MARUNOUCHI