NPO法人芸術資源開発機構ARDA「やまとあーとシャベル」の皆様と、草柳小学校3年生のところへ授業に行きました。
「鑑賞授業」と「表現授業」の2回に分けて行われ、
作品を鑑賞した後に、作者からビデオメッセージが届き、一週間後に作者と描くという、凄くワクワクする流れになっています。
事前に行われた鑑賞授業の終わりに僕からビデオメッセージで子どもたちに「今の自分にはギリギリ描けなさそうな描きたいもの」を選んでもらいました。
そして当日。
まず初めに、
「この中に自分は何かで世界一になれると思っている人はいますか?」
と僕は質問しました。
二人の手が上がりました。
サッカー選手と水泳選手。
こうしてみんなの前で宣言できた二人は、
そうなる可能性がたぶん1万倍にあがったと思います。
「僕もこんな歳にもなってまだ自分がそういうアーティストになれるとしか思えません。
今日はそういう作品をみんなと一緒に作りたいと思っています。」
こうしてまず僕自身と体育館にいる全員の気を引き締めました。
制作内容は、生き物を描いて、枝や葉を描いて、切り抜いたものを貼り合わせて繋げて世界を広げて行きます。
そして次第に自分の世界と友達の世界が繋がっていきます。
一週間前から気持ちを暖めてきてくれたおかげで制作が始まるとほとんどの子は勢いよく描き始めました。
でも中にはうまく描けないという子も何人かいました。
みんな本当に素直に自分が描けなさそうなものに挑戦してくれていたのです。
「どうすればうまく描ける?」と多くの子が質問してきました。
本気で描こうとしているからこそ自分の絵と実物とのずれが気になっているのです。
でもそこにその子にしか感じられなかった感覚が強調されて表れています。
それがその子の絵の良さの原石です。
だからこそ、僕はこの助言をすることができます。
「よくこんなところまで観察したね。凄いね。実物と同じにしようとしなくて大丈夫だよ。
” すでに実物より絵の方が良くなっているから “」
本当に本気を出してくれていたからこそ、この言葉がしっかり届いてエネルギーに変わっていくのが僕にまで伝わってきました。
この授業で大切なことは絵のスキルアップではなく、
新しい物事の捉え方で思考する体験です。
それでもまだうまくいかないという子もいます。
例えばレッサーパンダの子。
絵を見てわかる通り、どう見てもお世辞抜きでうまくいっています。
その子はついに体育館から出て行ってしまいました。
僕が代わりにその子の絵を切り抜いていると、周りの子たちが
「この絵すごく素敵だよね。でもあの子はいつもこうなんだ。」
と僕に教えてくれました。
それを聞いて僕は、彼は他人からの評価に左右されない良いアーティストだと思いました。
みんなにうまくいっていると言われているのに調子に乗らず、本人はうまくいっていないと判断しているのです。
あとはその力を逆方向にも使えるようになった時きっと彼は成功します。
世界中の人に「うまくいってない」と言われても本人だけは「うまくいっている」と思えるというふうに。
昼休みの間に作品を仕上げて、5時間目の完成作品の鑑賞会では本当に素敵なことが起きました。
自分の絵の素敵さに本人だけが気づいていなくて、みんながその子の絵を素敵だと思っている状況です。
それがあちらこちらで起きていました。
「自分の絵じゃないみたいに良く思えてきた」と子どもたちは言いました。
僕はその様子を見ていて感動という言葉では言い表せない何かが溢れそうな感覚になりました。
みにくいアヒルの子の絵本で、自分が白鳥になっていることに気づいていないページから、
水面に映る自分に気づくページを開いた時みたいな、それを現実の世界の子どもたちで見ているような感覚です。
この ”水面作り” が僕の使命だとすら感じました。
来年も継続して「やまとアートしゃべる」の皆さんと大和市のどこかの小学校でこの授業を行う予定です。
すでに来年が楽しみです。
この授業は、コロナで延期と中止を繰り返し、実現までに3年もかかりました。
その分、3年かけて練ることが出来たプランでもあります。
1日で作品を完成させるワークショップとしては最高傑作だと思います。
やまとあーとシャベルの皆様には、僕の展覧会やワークショップにも沢山参加して頂き、僕の作品を理解するための勉強会まで開いてくださったりして、この授業を作るために沢山の時間と労力を割いて頂きました。3年間も一緒に動いてきたのでもうすっかり職場の同僚のような気持ちです。
学校の先生方や市役所の方々も子どもたちのために何かしたいという人ばかりで本当にありがたかったです。
この授業はこんなに沢山の方々の協力があってこそ可能になる授業です。
素晴らしい機会を本当にありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いいたします!
主催 NPO法人芸術資源開発機構ARDA https://www.arda.jp/cooperation/