とても特殊な誕生日

今日は特別な誕生日だったから、この気持ちをずっと忘れないように。

14日 誕生日前日

大好きなサーモンの刺身とイチゴのショートケーキを買って亜矢子と誕生日を向かえる準備。
夕食を食べて、go君からもらった入浴剤でお風呂にはいって、ケーキを食べて僕は一つ年を取る。予定だった。
その入浴剤に大変な仕掛けがしてあった。お湯の中から鹿や熊やトナカイやコウモリが出てきた。
それを僕はとても喜んで、素敵なバスタイムが過ごせると思っていたら、
その中に手紙が1枚浮かんでいた。あわててそれを干す。でもほとんど手遅れで字がにじんで読めなくなっていて分かるのはそれが地図であることくらい。お風呂に入りかけていたので、もう服は脱いでるし、とても寒いけど一生懸命それがどこなのか調べる。
驚きが、わくわくに変わり、わくわくがイライラに変わった頃、それがうちの近所であることが分かった。
今日はもう外も暗いしとりあえずお風呂につかり冷えた体を、お湯に浮かんだ動物たちと暖め直すことにした。
ケーキを食べて、明日を待つ。
こんなに誕生日が待ち遠しかったことはない。


15日誕生日当日

外は晴れ。朝起きて、何があってもいいように一応、最大級のオシャレをして散歩に出かける。
大きな空き地を二つ越え、地図の場所にあったのは郵便局だった。
そこはこの辺りで一番冗談の通用しない郵便局。僕はそこで昔何度も傷ついたし、不安な気持ちにもさせられたので、
最近では遠くの郵便局に行くようになっていた。
しかも僕は何故そこへ向かっているのかうまく説明できない。
局員にまず自己紹介をする。でも何も起きない。不思議そうな顔をされる。
「来れば分かると思ったのですが。」まだ何も起きない。迷惑そうな顔をされる。
来るべき場所はここじゃなかったのかもしれない。空き地の隅っこのあたりを掘ってみるべきだったのかもしれないと僕は思い始める。その時、奥の方から女性の局員がとても大きな白い箱を恐る恐る引きずって出してきた。
「もしかしてこれじゃないですか?」「たぶんこれです。」
僕がそのケーキと書かれた箱の以上な大きさに冷静さを失っていたので、局員に大丈夫ですか?って何度も聞かれた。
女性の局員は免許証を2度確認した。車で出直そうかとも思ったけど、郵便局のどの局員も、もの凄く持ってかえって欲しそうにしていたので、もう引っ込みが付かなくなってしまった。
持って歩くにはその箱はとても大きすぎた。近くの公園のベンチに座ってしばらく考えた。
公園では沢山の老人がゲートボールを楽しみ、数人のおじさんがジョギングで汗を流し、警察が2度僕の前を通り過ぎた。
やっぱり持って帰ることにした。

白い箱の中には白い紙くずがぎっしり詰め込まれ、あっという間にアトリエの床を紙くずで覆い尽くした。
紙くずを箱から出す間、僕は少年になった。
その中から出てきたのは、古いシャンデリア。

そして僕は一つ年を取った。でも僕の心は少年になった。

ありがとう。