2007-08-01から1ヶ月間の記事一覧

余力

一見死んでいるけれど、掴んで空に投げると実は、 9割のせみが羽ばたく余力を残している。 僕が掴んで投げなければ、そのまま死を待つつもりだったらしい。 もう一回羽ばたけば寿命は縮まるかもしれないけれど、 そこで寝てたって良いことなど一つもない。 …

2006年8月蝶々の思い出

蝶々との生活が終わってちょうど一年がたつ。 「君の分身たちは今日もどこかで活躍しているよ。」 線香に火をつける。 せっかくなので20本くらいまとめて燃やす。 やっぱり死は悲しい。 あの時、僕はずっと室内で過ごした蝶チョに、一度空の上を見せてあげた…

浅草寺

3週間前、僕は一分一秒を無駄にせず絵を描いていた。 絵の進みが悪いと不安になる病気のように。 夏休み、絵を描かない3週間、今では絵を描かないことが全く気にならなくなった。 コーピーした蝶チョを切り抜いたり、拾い集めた廃材でシャンデリアを作ったり…

夏休みの終わり

遠くの空を雷が裂く。 久しぶりにアトリエに帰ってきた。 夏休み終わり。 封印を解くような気持ちでアトリエの扉を開く。 室内に飾られた絵たちは、留守にした間にすっかり僕の体から切り離されていた。 「こんなにも僕の絵は凄かった?」 亜矢子に尋ねる。 …

洞窟リサーチ

暑くて僕はもう歩けない。 次の絵のリサーチのためにわざわざここまで来たのに あらゆる物事を感じる余裕もなく、感じるものはただの暑さだけになる。 リサーチどころではなく僕はただの砂漠の旅人と化す。 洞窟に到着すると空気が冷たく僕を冷やす。 鍾乳石…

世界遺産の散歩

とても暑いけど、せっかくなので僕は世界遺産を歩く。 時代の止まった不思議な村で黒いトンボが宙を泳ぐ。 その一羽が熱中症で横たわっていたので銀山の洞窟につれて入る。 洞窟の中は冷やしすぎた山手線の車内よりもずっと寒い。 入り組んだ迷路のような細…

花火

玄関のドアを開けると一羽の雀がたおれていた。 意識はないけど眠っているようにも見える。 僕は熱中症と診察した。 牛乳石けんの箱に入れて一緒に出掛ける。 多摩湖の森を車でドライブしていると 廃墟だと思っていた山奥の料亭の灯りがついている。 ちょう…

一本のゴルフクラブ

夜の散歩。雲が早く移動するので星が全部飛行機に見える。 ゴルフセットが一式落ちていた。 一本だけ頂いてゴルフの練習場へ行く。 僕には一本しか必要ない。 最近ただひたすら絵を描いてきた。 身の回りのいろいろな状況が動き出しても僕はまだ動かない。 …

夏休みと熱帯魚

一通りの任務を終えて僕は夏休みに入った。 2日間の雨はいつもの散歩コースを川にして、町のチリやホコリを奇麗に洗い流した。 以前僕が紅茶を飲んだ場所も今日は水の中に沈み鴨がその上を泳いでいる。 僕は新しく熱帯魚を買った。 深海魚のように白く半透明…