洞窟リサーチ

暑くて僕はもう歩けない。
次の絵のリサーチのためにわざわざここまで来たのに
あらゆる物事を感じる余裕もなく、感じるものはただの暑さだけになる。
リサーチどころではなく僕はただの砂漠の旅人と化す。

洞窟に到着すると空気が冷たく僕を冷やす。
鍾乳石のつららを観察しながら少しずつ元気をとり戻す。

洞窟が長過ぎる。
奥へ行くほど温度は下がり8℃になった。
寒くてもう歩けない。
しばらく僕はしゃがみ込む。

目の前に流れる水を凝視して何とか体の不調を思考の外へ追いやる。

僕のからだが骨まで冷えた頃、追い討ちをかけるように洞窟が水洞窟へと変わる。
つま先を付けると痛いくらいに冷たい。
「引き返そう。」
僕は言う。

膝まで氷のような水につかって奥へと進む。

やがて鍾乳洞の美しさの為、僕は暑さも寒さも冷たさも体の不調も全て忘れた。
「ここまで来なければ全く意味がなかったよ。」
僕は言う。

そして同じ台詞を僕は多分、死ぬ間際にもう一度言う。