とても暑いけど、せっかくなので僕は世界遺産を歩く。
時代の止まった不思議な村で黒いトンボが宙を泳ぐ。
その一羽が熱中症で横たわっていたので銀山の洞窟につれて入る。
洞窟の中は冷やしすぎた山手線の車内よりもずっと寒い。
入り組んだ迷路のような細い洞窟を抜けると黒いトンボは手のひらを蹴って飛び立った。
入れ替わるようにして黒い蝶々が倒れこんできた。
僕が触れると動かなくなったので連れて帰ることにした。
「綺麗だね。」僕とおばあちゃんは蝶々の羽の美しさにしばらく見とれる。
ローソンのコピー機で蝶々を7羽に増やしておいた。
コピー機を知らないおばあちゃんにはそれを説明できないので、
おばあちゃんは子供のような顔をしてそれをいつまでも眺める。