一本のゴルフクラブ

夜の散歩。雲が早く移動するので星が全部飛行機に見える。
ゴルフセットが一式落ちていた。
一本だけ頂いてゴルフの練習場へ行く。
僕には一本しか必要ない。

最近ただひたすら絵を描いてきた。
身の回りのいろいろな状況が動き出しても僕はまだ動かない。
時々動き出したくてそわそわしても夏の間は動かない。
絵の完成度についてだけ考える。

夜のゴルフ場はほとんど人もなくて気持ちがよい。
昼間の客の飛ばしたボールが緑の芝生に水玉模様を作っている。
僕は一本のゴルフクラブを握り二階の打席に立つ。
心地よい風が吹き抜ける。

特に発表の予定がなくても一人で自分を超え続ける。
もう十分だと思った自分も、もう十分だと思われた自分も、さらに超える。
誰の手にもおえない状態になる。
とてつもなく才能を発揮し続ければ埋めようとしても埋もれない力になる。
かどうかの実験中でもある。

ゴルフクラブは一本しかいらない。