浅草寺

3週間前、僕は一分一秒を無駄にせず絵を描いていた。
絵の進みが悪いと不安になる病気のように。

夏休み、絵を描かない3週間、今では絵を描かないことが全く気にならなくなった。
コーピーした蝶チョを切り抜いたり、拾い集めた廃材でシャンデリアを作ったりする余裕がある。

いったん描き始めるともう戻れないことを知っている。
入ると出られない。
僕はやり残したことが無いかを念入りに確かめてonのスイッチを押す。

浅草寺でお参りをする。
おみくじをひくのは3年ぶりくらい。
「これから描く新作はこれまでで一番いいはずだよ。大吉などで今の僕を表現しきれるなんて思わないでほしい。それよりずっと素晴らしいものを描くからね。」
浅草寺に向かって僕は言う。

筒を振る。
57番の棒が出る。
57の引き出しを開ける。
一番上の紙をとる。


「さすが浅草寺。」
僕は言う。
「これで君の未来に於いて、不幸な出来事は全て取り除かれた。」
浅草寺は言う。
「ありがとう。良い出来事は実力で作るから大丈夫。」
僕は言う。

おみくじの結果に満足した僕は勢い良く絵を描き始める。