花火

僕が一足先に秋を始めると、空は慌てて秋を落とし始めた。
僕は秋が得意なのでとてもうまくそれをキャッチする。

もうすぐ抱えきれないくらいの秋が落ちて来る。
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夏の花火大会は全て終わった。


ハート形にしてみたり顔を描いてみたり曲に合わせてみたり。
花火界の進歩に行き詰まりを感じた僕はこの夏1つも打ち上げなかった。

僕はアトリエの中で、大きさと高さの事だけを考えた。

まるで夜空の星がひとつ誕生したかのような、
地球を包み込むくらいの大きさと高さの花火の事だけを。

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朝の多摩湖の散歩。


足もとを観察し終えた僕は西武遊園地の観覧車に乗った。

   遠くが見えた。

透明な箱が時計回りに一周して同じ場所へ僕を運ぶ。

但し、それはまだ観察し終えてない新しい地面である事を僕は見落とさない。



僕は灯りを灯し、それを導火線の先にそっと乗せた。