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日本に帰ってきた時、何かが始まるよってgO君が言った。
その何かは分からないままだけど、何かは確実に始まった。

数年前、日暮里のHIGUREでの展覧会で、gO君と始めて会った。
その日その時間お客さんは誰も無く、3階の事務所でこれからの画家活動について深く深く考えていた。
もう日本を出るしかないと、決意を固めていた。
入り口のセンサーが鳴った。それがもう少し早ければ、海外へは行かなかったかもしれない。
階段を下りていくと前髪の尖った、不思議な空気を持つ少年が絵を見ていた。
階段の上からしばらく様子を観察した。
ずいぶん真剣に絵を見ている。
邪魔しちゃ悪いかなと思ったけど、見るスピードがかなり遅いので、見終わるのを待ちきれず、こんにちわって言ってみた。

gO君はCDを持ってきていた。今すぐ聞いて欲しいと言う。地下室にステレオセットがあっていろいろやってみたけど使い方が分からない。諦めようとしたけど、諦めてはくれない。
瞳に諦めの色が全く見えない。
ギャラリーに誰もいなかったので、思い切ってギャラリー全体のBGM用のところにCDを突っ込んだ。
もっとボリュームを上げて欲しいとかも言ってきた。

会場にgO君の曲が流れる中、自分の絵の前に戻った時、それはジョンとヨーコの体験したあの出会いだった。音と溶け合い絵はさっきまでより生き生きとして見えた。一瞬にして絵が成長したようにも見えた。
そしてgO君もさっきまでより生き生きと話し始める。
驚いたことに、その日はかなり深く深く考え事をしていて誰もついて来れないくらいの深さまで潜水していたはずなのに、同じ深さでgO君は会話してくる。
同じ位置。

それからNY Parisを経て、別格の力を手にして帰国した時、gO君と出会ったあの日の位置からは、遥かに遠い距離。あの日大きく見えたいろいろなものは、小さく見え、小さく見えたいろいろなものは大きく見えた。
gO君まで小さく見えたらどうしよう。そしたらまた独りぼっちの戦いが始まるだけだと自分に言い聞かせ、最悪の事態も覚悟して、久しぶりにライブを見に行く。
1曲目、新曲のloop。鳥肌がったった。
信じられない。
どうやったらそこにたどり着けるというのだろう。
全く別の日々を送ったはずなのに。 余計な心配してごめんなさいだった。
嬉しくて嬉しくて言葉には出来ないので、言葉にはしなかった。

そして何かが始まる。いつだってその何かを表現する言葉は見つからない。
だからこそ、絵を描き歌を歌うのかもしれない。



イミグランツカフェでの展示は2/12までやっています。
2/3はgO君のライブです。
先日のパーティーに来れなかった方、是非見に来て下さいね。
僕も見に行きます。

http://www.immigrantscafe.com/

http://www.jellyfish-lab.com/go