イルカ=絵画として

画家になると決めた頃、

僕は他のどの画家にも絶対まねできないものを持っていた。

それが青だった。

青の威力をより効果的に倍増させるためにいくつもの技を磨いた。

又はいくつもの蒼へ潜った。

だけど作られた個性は必ずいつか芸術家を滅ぼす。



ここ数年、

僕はそのひとつひとつを取り外す試みをして来た。

自分らしい装飾をまとわなくても僕は僕でいられると信じて削る。

自分を削って削ってシンプルに。

自分らしさを削れば削るほど、それとは対照的に画面の制約は解除され、モチーフと色は増えた。

言葉で分かりやすく説明できる僕らしさは何もない状態になる。


(1)全世界の水族館でNo1の実力を持つトップスターのイルカがいる。あれほどイルカの潜在能力の高さを魅せることの出来るイルカは他にいない。と人々は言う。

(2)全世界の海域で一頭の野生のイルカが伝説になる。これまで考えられてきたイルカの魅力を根底からくつがえすほどの力を持つらしい。と人々は言う。

の2人のイルカがいたとする。

僕は(1)が脱走して(2)になった感じを目指している。


つまり、青≠絵画でありながら、

イルカ=青 又は イルカ=絵画として、(1)を(2)に軌道修正している。


久しぶりにプールに潜って僕は頭を整理した。
今日は時間がかかる。
もう2時間も泳いでいる。手のひらはすっかりふやけている。
プールのガラスの向こうは雪景色。