15代吉左衛門を見た時、突然、初代長次郎の良さが分かった。
実はそれまで、僕はそこまでこの器の良さは分からずにいた。
展覧会のポスターには「利休の愛した美」と書かれている。
「申し訳ないが僕は絶対に分かったふりなどしないことに決めている。」
と僕は長次郎に言う。
ところが最後の15代目吉座衛門の作品を見た時、一瞬にして僕の何かが変わり始めた。
僕はハッとして最初の初代長次郎のところに急いで戻った。
僕は長次郎の黒いかたまりみたいな器が好きで好きで仕方のない人間になっていた。
「僕もあなたを愛している。」
と僕は言った。
掴んだ何かをすぐに試すため、
アトリエに戻った僕はさっそく紙粘土を買いに行った。
陶芸教室に行くとか気の長いことは言っていられない。
今すぐ掴まなければならない。
早くしないと灯ったばかりの小さな炎はすぐに消えてしまう。
せっかくなので息子も巻き込むことにした。
「自然の一部のように自然体で、まるで自然の中にあるもののように、
分かりやすく言えばただの石や地面の佇まいに近づけば近づくほど良いとしよう。」
と息子に僕は言った。
「できる気がする。」
と息子は言った。
「ただの石に近づきたい」
2017 紙粘土 アクリル絵の具で着色
(黒い方は僕の作品、茶色い方は息子の作品)