120年前の今日の対談

「日本人達は電光石火のごとく早く描く。
それは日本人の神経が研ぎ澄まされていて、感覚がとてもシンプルだからだ。」
ゴッホは言う。
「そうかもしれない。でもあなたはその100倍凄い」僕は言う。
「でも日本人は息をするのと同じくらい簡単に2~3本の線で人物を簡単に描いてしまう」
ゴッホは当時誰よりも素晴らしい作品を制作しながらも、全く誰からも相手にされず精神的にかなり参っていた。
僕も現在の美術界に於いてだいぶ参ってはいるけれどゴッホほどじゃない。

「僕が画家として世界の頂点にいると仮定します。」
思い切って僕は言う。
「決して自惚れている訳ではありません。仮定せずに物事は前に進みません。だから今日の僕はこうして珍しく敬語も使って謙虚な姿勢で仮定します。どうか気を悪くしないでください。
もし、僕が世界の頂点にいる画家だと仮定するならば、町中に散らばった美術作品のほとんどよりも僕は優れた作品を描いている事になります。多少有名な作家であってもほとんど全部です。
僕が言いたいのは、下にあるものが上にある理由をいくら考えても答えなんて出ないってことです。
自信を持って大丈夫です。あなたの作品は未来の日本で誰よりも有名です。
人々はあなたの作品を見るために2時間も3時間も並びます。
本当です。
なぜなら僕は120年後の日本に住む画家だからです。」

こうして僕が120年前のゴッホを励ますように、
120年後のだれかが僕を励ましてくれたらどんなに楽になれるだろうと僕は思う。

そして僕とゴッホは同時に席を立ち、絵筆を握る。