コンセプトについての研究

54階にある美術館を歩く。
先日対談したばかりのゴッホが僕に作品を見せる。
ビル.ヴィオラがややこしく絡み合った僕の頭の中を洗い流す。
そして次は僕が作品を作る。
その前にここ最近の研究を一旦まとめる。

(1)
夜の深い闇の色を黒という一言で表すように、
明け方の空の色を青という一言で表すように、
難しい単語の多くは時間短縮のための記号でしかない。
そして一度それを使うと、もともと感じた複雑な感情を人々は失う。

本物の芸術家はそのような記号を使わなくても短くシンプルに言葉を選ぶ事が出来る。

(2)
頭の中に降りてくるインスピレーションを、言葉で表すのがコンセプトであり、表現して表すのが作品。
時にはコンセプトなど飛び越えて、作品を生み、
時にはコンセプトのもとに作品を仕上げる。
どちらにしても作品=コンセプトでありコンセプト=作品だからどちらかがあればもう一方も自然な形で存在する。
どちらかが欠けているものはだいたい偽物。
[*(例外)アウトサイダーアートについてはまたの機会にします。]

芸術家は意味や論理といった手続きを回避する資格を持つ

(3)
まとめ。
本当に良いものはコンセプトが何であるかを知るまでもなく、見ただけで体に何かが届く。
一回見ただけで秒殺できるくらいの絵を描こう。
コンセプトなど想像させておけばよい。説明されるとほとんどの場合がっかりする。
コンセプトを想像させるほど長い間惹きつける絵を描こう。

但し問われた時に返す言葉も作品の一部分。
それでもやっぱりコンセプトを口にするのを僕はためらう。
とっておきの一言は死ぬ間際の遺書に書けばよい。