白熊の絵を描いていると、さっきからどうも白熊に見られているような気がするのでベランダの窓を開けてみる。
空気が冷たく冷やしたオレンジ色の椅子の上に僕がキャンバスに描いているそのままのサイズの
小さな白熊っぽいものがうずくまっていた。
「白熊ですか?」
僕はそのうずくまった白い獣に聞いてみる。
「白熊でもあり、君自身でもある。」
その白い獣は答える。
「実は白熊でもあり、僕自身でもあるあなたに伺いたい事があるんですが。」
「分かっているよ。僕は白熊でもあり君自身でもある訳だからね。」
そう言うと、白い獣は一枚の紙を僕に渡した。
:作品制作と同時に360°周囲にアンテナを張る事。
:目に見えない糸を丁寧にチェックする事も怠らない。
:気持ちが焦って重要なインスピレーションを見落とさない。手間でもちゃんと書き留めておく事。
:早く描きたくてもしっかり眠る事。
:図書館の机でただ考え事をするだけの時間も必要。
:再来年Parisへ行く事までイメージの中に入れる事。
:お風呂に浸かって気持ちを沈める事。
:時々軸の点検も忘れない事。
:道の隅に生えた植物も見落とさない事。
:流れ星を見るために、いつも空を視界の何処かに入れておく事。
「足りない部分は後からFAXするからとりあえずこれだけ渡しとくね。」
白熊が言う。
僕はこれを受け取ってまた白熊の絵のつづきを描く。