昨年のちょうど今頃、僕は広島の壁画の高い足場の上で高所恐怖症に震えていた。
あの時描いたケーキを持った女の子を、今度は震えずに落ち着いて、もう一度描いてみよう。
群馬県の高崎アートプロジェクトで完成させた4体の動物。
いろいろなワークショップで出会った子どもたちの絵。
乗り越えてきた一つ一つの時間が今を作っていく。
足元を透明に、さらに透明に。
地面が地面よりももっと深くまで広がるように。
なんて美しいのだろう。
これではこの絵はすぐに僕のもとを離れて欲しい人のもとへ行ってしまう。
ここまで来て誰かの穏やかなインテリアで終わってなるものか。
制作中の僕はなぜかいつもそう思う。
買う人にも勇気がいるくらい、お互いにとっての成長でありたい。
展覧会が始まって買ってくれた人に対して僕が本当に感謝できるように。
本当に喜び合えるように。
パークホテル東京の記憶が蘇る。
あの空間で表現したことを一枚の絵で表現するんだ。
素敵な絵になんてならなくていい。
それを描いてみなければ分からなかったことが一つでも分かればそれでいい。
それを知るために僕は描いているのだから。
「スーパーハーモニー」2023 162.0cm×162.0cm (detail)
池平徹兵 個展 「スーパーハーモニー SUPER HARMONY」
2024 . 3月27日(水)ー4月14日(日)
ヨロコビto Gallery