佐藤美術館 ビクトリーブーケ展

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佐藤美術館展示風景

 

 

佐藤美術館に作品を設置してきました。

 

「アーティストからメダリストへの贈り物 ビクトリーブーケ展」

会期 202017日(火)~31日(日)

場所 佐藤美術館 http://sato-museum.la.coocan.jp/index.html

 

パトロンプロジェクト展覧会イベント】

11817:00

出品作家3名(池平徹兵、川上和歌子、鞍掛純一)のアーティストトーク、ワークショップ、交流会。

 

ワークショップでは青参道アートフェアで制作した大きな作品に皆様の絵を加えて頂きます。

この作品は今後も様々な展覧会で展示しながら成長させていきます。

東京新聞にも掲載して頂きました。ぜひお早めにお申し込み下さい。

https://www.facebook.com/events/419383915671628/?active_tab=about

 

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若葉福祉園からのクリスマスプレゼント

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若葉福祉園から突然のクリスマスプレゼントが届きました。

ワークショップを行ったのは5年前です。

今でもあの時のことを覚えていてくれてとても嬉しいです。

僕にとっても忘れられない作品です。

5年前に関わった皆様ありがとうございました。

あの日の記憶は今でも僕や参加者の中にちゃんと生きています。

 

 

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制作1日目

 

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制作2日目

 

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「私を測る物差しはまだあなたの中に存在しない」

The ruler measuring me does not yet exist on you.

2014 145.0cm×400.0cm acrylic on canvas

 

主催 一般社団法人アーツアライブ

助成 公益財団法人大和福祉財団

 

 

5年前の記録。

 

 

はじまりは2013年のことだった。

 

「壁画プロジェクトを障がい者の方を対象に実施したらどうかと思いました。

 ご興味あるかどうか、また ご意見をお聞かせください。」

とアーツアライブ代表の林容子さんからメールが来た。

 

意見どころか障がい者について僕は全く知識がなく、興味があるのかどうかすらも分からないので

「それは良い考えだと思います。」

とお返事をした。

 

そして2014年の8月、

「秋に実施しましょう。」

と突然のメールがあった。

 

少し焦ったけど起きるべきことは起きるべき時に起きるのだろう。

 

「楽しみにしております。」

と僕は返事をした。

 

 

 

 

 北区若葉福祉園(重度知的障害者通所施設)でのワークショップ

 

 

 

海外へ滞在したときのような衝撃があった。

 

それ以上かも知れない。

 

まるで別の宇宙に来たようだ。

 

英会話以上に僕の言葉は通じなかった。

大声で叫んだり、床に頭を打ち付けたりする人もいる。

 

こういう話だけ聞くと障がいを持って生まれてかわいそうと思うかもしれない。

でも僕だってそうしないだけのことで、頭を打ち付けたくなったり大声で叫びたくなったりすることはある。

自分の気持ちに正直な分、彼らの方が我慢している僕よりキラキラとしているかもしれない。

苦しんだり辛そうにしている人はおらず、彼らにはそれが当たり前の状態で普通なのだと思った。

 

海外であろうと宇宙であろうと僕は画家としてベストな状態で存在するだけだ。

 

画面を塗りつぶしたような絵が多かったけど、塗りつぶすことしか出来ないから悲しいのではない。

塗りつぶすことが出来て心から嬉しいらしい。

そこまで純度の高い色塗りを僕は出来ない。

 

彼らは描きたい絵しか描かないし、塗りたい色しか塗らない。

究極に僕の目指す絵画のデテールが次々に集まった。

 

「素晴らしい作品をありがとう。大事に使わせてもらいます。」

と僕は作品を大画面に貼っていく。

 

気がつくとワークショップは終わり、やったーやったーと大きな声で彼らは何かをやり遂げ拍手をしながら退室していった。

 

作品は素晴らしく順調にうまくいっている。

 

良い予感を持ちながら未来につなげた。

 

彼らに僕たちのように生きることは無理だし、僕たちが彼らのように生きることも無理だろうと思う。

そこから目を背けてはならない。

でもそれ自体が不幸だというわけではない。

一緒に生きるのが本当に難しいだけだ。

 

但し、一緒に生きるのが難しいといっても、

嫌いな人に対して二度とこの人とは付き合いたくないと感じるのとは違って、

難しい登山に挑むような種類のやりがいのある困難だ。

本当に難しいけど僕たちは一緒に生きたいという心をお互いに持っている。

それは間違いない。

 

あまりに難しくて心が折れそうになる時もあるに違いない。

 

世界中を旅して回ったという人より僕はここで働く職員を尊敬する。

 

なんといってもここは別の宇宙なのだ。

 

海外とはレベルが違う。

 

ここの職員が日々直面している冒険に比べたら、僕の海外経験なんてかっこつけた散歩程度にすぎない。

 

完成披露会ではみんなステージに上がり誇らしげに自分の作品を紹介してくれた

 

それはまるで難しい登山の山頂の景色のようだった。

 

 

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ワークショップの様子

 

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完成お披露目会の様子

 

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最後はみんなステージに出てきて家族に自分の描いた絵を誇らしげに話していました。

本当にキラキラしていました。

 

透明な水の中へ into transparent water 🔴

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透明な水の中へ into transparent water 2019 33.0cm × 33.0cm oil on canvas



 

白くまと灰色の人間と黒毛和牛が一同に会することは初めてのことだった。

 

「あなた方を絶滅させたりはしません。」

灰色の人間は地球温暖化と白熊保護についての見解を熱く語った。

彼は何としても白熊を絶滅の危機から救いたかった。

胸を打つ素晴らしいスピーチだった。

 

「先程から白熊についてばかり心配していますが、私たちについてはどうお考えですか?」

黒毛和牛が問う。

 

「もちろん同じように考えています。

 私たちはあなた方に完璧に行き届いた食事を与えているはずです。

 絶滅の心配はありません。」

と灰色の顔が言う。

 

白熊が目を閉じる。

 

そしてはじめて口を開いた。

会議は白熊にとって申し分ないほど優位に流れていた。

だまってさえいれば会議の後、灰色の人間から最高級の黒毛和牛をごちそうになる約束までしていたし、それを楽しみにもしていた。

 

「あなたはだまされている。」

黒毛和牛に白熊が言う。

 

言ってしまった。もう後戻りは出来ない。と白熊は思う。

 

「正直に言いましょう。僕はあなたもそしてあなたも食べたいと思っています。僕たちはそういう生き物です。

 黒毛和牛さんあなたがおいしい食事を与えられているのはあなたをよりおいしくする為です。

 灰色の人、白くま保護はしなくて結構です。僕たちが増え過ぎた場合、今度はあなた方は僕たちを減らそうとするはずです。ほっといて下さい。」

 

黒毛和牛に目をやると、闘牛の様に後ろ足を踏みならし重心を低く取りながら尖った角を灰色の人間に向けていた。

 

実は前々から不信に思っていた。

牧場の生活はあまりに心地よく、それを失うのが怖くて聞けなかったことが一つある。

白熊が勇気を出した以上、僕も確かめる必要がある。と牛は思う。

 

「正直に答えて下さい。あなた方は毎日、僕の優秀な仲間を選抜して何処かへ連れて行きますね。

 早く選抜されるよう頑張りなさい。とあなたはいつも僕たちを応援してくれます。

 ところが何処へ連れて行かれるのかは未だ謎です。

 帰ってきた者が一人もいないからです。正直に答えなさい。僕の仲間は元気ですか?」

黒毛和牛は言う。

 

灰色の人間はテーブルの下で静かに拳銃を抜いた。

目には涙を浮かべていた。

いったいどこで間違えてしまったのだろう。と思う。

二人を愛する気持ちは本当だったはずなのに。

 

先程の素晴らしいスピーチがまぶたの裏に滑稽に映し出された。そんなことより遥かに深刻な問題が目の前に広がっていた。

 

白熊も黒毛和牛も泣いていた。

 

涙はどれも透明に澄んでいた。

サンタクロースとトナカイ SantaClaus and Reinder

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サンタクロースとトナカイ SantaClaus and Reinder 2019 33.0cm × 33.0cm oil on canvas

 

「欲しがるものを与えても、重要な部分は何一つ満たされない。」

トナカイは言う。

 

「そして毎年僕は忙しくなる。それが仕事なんだ。」

サンタクロースがいらいらしながら言う。

 

「いったいどうしてそんなことを言うんだ。サンタクロースが仕事だなんて。」

トナカイが怒る。

 

「言ってる意味が分からない。みんな仕事をするんだよ。」

サンタクロースは困惑する。

 

 

星降る夜。

 

二人が子どもの家にプレゼントを届けにやってくる。

 

「この子の欲しいものはたしかぬいぐるみだった。」

 

サンタが玄関のベルを鳴らそうとする。

 

「ちょっと待って。それではただの宅急便だよ。あなたが煙突から入ることに意味がある。」

トナカイが止める。

 

「それは不法侵入だよ。それに今の家に煙突なんて無いんだ。しょうがないじゃないか。」

サンタクロースは言う。

 

「それなら今から煙突を作ろう。それが嫌なら僕は解散する。」

トナカイが言う。

 

「無茶言わないでくれよ。そんなことしたら本当に警察に捕まるよ。これから何千人、何万人の家を回らなくちゃいけないのに。」

サンタクロースが言う。

 

「そんなことよりももっとずっと大切なことをあなたはお忘れですか?」

トナカイは泣き出した。

 

煙突作りは本当に楽しかった。

サンタクロースは久しぶりに夢中になれた。

子ども達が驚く姿を想像すると本当にワクワクした。

 

こうしてサンタクロースはその年のクリスマスたった一件の家に煙突を作ることで時間切れになった。

 

 

クリスマス当日。

 

突如現れた煙突に世界が驚いた。

 

屋根にはトナカイの足跡もある。 

 

そのニュースは世界中の子どもたちの心を夢と希望で満たした。