「欲しがるものを与えても、重要な部分は何一つ満たされない。」
トナカイは言う。
「そして毎年僕は忙しくなる。それが仕事なんだ。」
サンタクロースがいらいらしながら言う。
「いったいどうしてそんなことを言うんだ。サンタクロースが仕事だなんて。」
トナカイが怒る。
「言ってる意味が分からない。みんな仕事をするんだよ。」
サンタクロースは困惑する。
星降る夜。
二人が子どもの家にプレゼントを届けにやってくる。
「この子の欲しいものはたしかぬいぐるみだった。」
サンタが玄関のベルを鳴らそうとする。
「ちょっと待って。それではただの宅急便だよ。あなたが煙突から入ることに意味がある。」
トナカイが止める。
「それは不法侵入だよ。それに今の家に煙突なんて無いんだ。しょうがないじゃないか。」
サンタクロースは言う。
「それなら今から煙突を作ろう。それが嫌なら僕は解散する。」
トナカイが言う。
「無茶言わないでくれよ。そんなことしたら本当に警察に捕まるよ。これから何千人、何万人の家を回らなくちゃいけないのに。」
サンタクロースが言う。
「そんなことよりももっとずっと大切なことをあなたはお忘れですか?」
トナカイは泣き出した。
煙突作りは本当に楽しかった。
サンタクロースは久しぶりに夢中になれた。
子ども達が驚く姿を想像すると本当にワクワクした。
こうしてサンタクロースはその年のクリスマスたった一件の家に煙突を作ることで時間切れになった。
クリスマス当日。
突如現れた煙突に世界が驚いた。
屋根にはトナカイの足跡もある。
そのニュースは世界中の子どもたちの心を夢と希望で満たした。