奇跡の再会

岡崎先生と奇跡の再会。画家池平徹兵の生みの親。

生まれつき自分は画家だと思っていた。ところがいつのまにかそれは夢として認識され、このままじゃ画家になれないぞって気がついた時に、岡崎先生は画家だった。

島根大学二年の頃、画家として生きていくことを決意した頃、周囲にそれを冗談だと思われ相手にもされなかった頃、唯一岡崎先生は一生懸命応援してくれた。画家としての心から、絵の描き方、個展の開き方、何から何まで、最後の一滴まで僕の体に染み込ませてくれた。こうして画家池平徹兵は誕生した。

最後の一滴まで吸収した僕は、さらなる成長を求め東京へ行くことにした。岡崎先生は寂しそうだった。
本当になんてひどいやつだと自分でも思った。でも感謝の気持ちは一生忘れないよって自分に言い聞かせ
、いつか大きく成長した姿を先生に見せたいと思いながら月日は流れた。

まだまだこれくらいの成長じゃ恥ずかしくて先生にもうしわけけない。
そう思ううちに、さらに月日は流れる。

昨年帰国した時、やっと先生に報告しようと決意した。今の自分の姿を見てもらおう。全てを始めるのはそれからだと思った。ここまで来れたのは先生のおかげだってこと言いたくて。
先生は病気で倒れ意識不明だった。会いに行っても、話も出来ないよって言われた。
それでも、夏に勇気を出して病院へ行ってみた。
そこにはもう岡崎先生はいなかった。

今の自分があるのはあの人のおかげなのに、それを無視して、何を描けるというのだろう?

昨日、親日美展で賞を頂いたので、東京都美術館へ表彰式に行った。
正直、賞を貰って何の意味があるんだろうって思いながら。

会場の良く日のあたるソファーに岡崎先生が座っていた。
幻かと思った。

「えらいね。頑張ってるね」って先生は言った。
もう涙の流し方なんてすっかり思い出せなくってたはずなのに、涙が出た。