こうして自転車で保育園に送迎するのもあと少し。
あと少しでランドセルを背負って小学校へ行くようになる。
同じことをするのも、大変に感じるか、楽しく感じるかで全然違う。
人間は記憶にもてあそばれるので、今日の記憶をどう作るかに未来はかかっている。
大変な送迎を少しでも楽しい思い出にしようと僕はこの自転車を組み立てた。
これなら一緒に運転しているような感覚で会話しながら楽しく走ることが出来るし、事故の時も瞬時に僕の体で娘を包み込んで守り抜ける自信が持てる。
ところがこの一年半、この自転車での送迎はパトカーとの戦いだった。
「二人乗りはダメですよ。降りてください。」
背中にパトカーの赤い点滅を感じながら僕は無視して走る。
保育園の帰り道、娘は保育園での出来事をいつも一生懸命に話してくれる。
警官だからと言ってそれを台無しにすることは許れない。
するとパトカーは僕たちを追い越して少し先に止まり警官がこちらへ歩いてくる。
「交通ルールをご存知ないのかと思いまして。その乗り方は違反ですよ。」
と彼はパンフレットを取り出して長くなりそうな話しを始める。
そのパンフレットでは僕は止められない。
「ご存知ないのはあなたの方です。この子の安全ならあなたの100万倍大切に考えています。」
僕はパトカーの追ってこれない森の中を走って家まで帰った。
ラッキーなことに家と保育園は道路を通らずに森で繋がっている。
何日か僕たちはパトカーを避けて森を走った。
でもやっぱりそれは逃げている気がしてまた道路を走ることにした。
間違ってないと思うなら逃げてはならない。
親の生き方を見て子どもは育つのだから。