蝶々

一昨日からこの家に住んでいるチョウチョがいなくなったと連絡が入った。

踏みつぶしてしまわない様に、そっとドアを開け、家中を探す。

行方不明のチョウチョは明かりを落とした寝室で先に眠っていた。

その日チョウチョはほとんど外を見ていた。

時々アトリエを舞う姿に儚さが漂う。

だからもう死んだのかと思って心配した。

今日マンゴーシロップを買ってきてあげるとチョウチョはとても喜んだ。

今日一日チョウチョはほとんど僕を見ている。

絵を描くのをじっと見ている。もう外は見てない。

どう?って聞くと羽を震わせたり首を横に振ったりもする。

チョウチョは自分の肖像画を描いて欲しいのだと今気が付いた。

でも残念ながら肖像画は描きたくない。

残りの命はあとわずか。

この家に来た印を何か形にしてみせるよ。