かわせみ

たんぽぽをたどって川沿いを歩いていると、4羽のカモが泳いでいたので、朝食のサンドイッチの時に切り落としたパンの耳を与えていると、天体望遠鏡のような大きなカメラを持ったおじさんが横に腰掛けた。

「趣味で小鳥を撮っているんです。」おじさんは言う。
「もう一週間くらいカワセミを待っているんです。」
おじさんは諦めの表情で僕に語る。


カワセミならすぐに来ますよ。」
カワセミが何なのかも知らない僕は言う。
でも小鳥との出会いに関しては、僕の最も自信のある分野だった。
「イメージが大切です。カワセミがやって来てあそこにとまるイメージをはっきり完璧に頭に描いて下さい。
その方法で僕は剣玉が出来るようになりました。しかも玉の方を手に持って剣を穴に入れるんです。」

僕が言い終わる前にくちばしの細い美しい小鳥が一羽、対岸に舞い降りた。
僕はその小鳥の色彩の素晴らしさに相当びっくりする。
カワセミです。」おじさんは言う。

その小さな小鳥は青い羽を魚の鱗のようにきらきらとこちら側に反射させている。
「この青、描ける?」カワセミが訪ねる。
「描けるよ。後でアトリエにおいで。」僕は言う。

夢中でシャッターを切るおじさんにお礼を言って、僕はアトリエに戻ってカワセミを待つ。