駅の改札を抜けると夜桜が空の闇を味方につけて強く発光していた。

「世界中の人間の期待が僕一人に集中したとしてもかまわない。」
突然、桜が僕に手本を見せる。

「世界中の人間にそれは無理だと言われてもかまわない。」
僕も空を見上げて桜に言う。

「それくらいの覚悟が必要だよ。」桜が言う。
「覚悟はもう出来てるよ。」僕は言う。

僕は架空の壁をよじ登る。
架空なので想像をやめると僕は落ちる。
架空でなければ登ってみせるのに。

おそろしく高い壁にぶち当たりたい。