Jelly fish な誕生日

誕生日が近づいて来たので僕は音楽家の仕掛けるサプライズに対しての警戒を強めていた。
この厳戒態勢の中に入り込むのは容易ではない。
00:10
楽しいパーティーから持ち帰ったシマウマのおもちゃを僕は眺める。
真っ黒なペンキを塗った方がかっこ良いかもしれない。
シマウマ。と僕は気付く。全くの自然な形で僕はシマウマの新しいおもちゃを手にしている。
すぐに僕はそのシマウマのおなかを割る。
00:30
やっぱり何か入っている。
コンパスとメモ。
(西北西で「クジラの世界」イヴ.コア200ページを調べる。)
何かがはじまったらしい。
11:00
図書館はまだ開館2時間前でガラスの向こうの館内では図書の整理が行われている。
その作業の一つ一つが僕への罠を仕掛けているようにも見える。
何がはじまるのか予想がつかない。
13:00
館内へ入る。職員一人一人を観察する。
特に不自然な動きをするものはいない。
指定の本を検索する。指定の本を見付ける。クジラの世界。
沢山のクジラについての本と一緒にそれは並んでいた。
図書館のラベルがちゃんとついた図書館の所有物。特に異常は見当たらない。
13:15
200ページ。マッコウクジラについて。何か挟んである。
それを気付かれないようにカバンに入れる。
職員一人一人を観察する。
特に不自然な動きをするものはいない。
13:20
本から取り出した写真は以前、僕が散歩中に見付けた不思議な老人ホームの中の霊安室だった。
http://blogs.yahoo.co.jp/betterhalf20012001/37777573.html

(深海の建築物にクラゲの標本を置いて来たよ。お誕生日おめでとう)

あそこにクラゲの標本が置いてあるとは思えないし置く事が出来るとも思えない。
仮にあそこにクラゲの標本が置いてあったとして、とりに行く事はとても難しい。
楽家goの言葉が何かの比喩である可能性80%。
何かの比喩であった場合、僕が素直にそこへ行くとおかしな事になる。
13:25
僕は現実逃避をしてしばらくクジラの世界の本を読む。今の気持ちをしっかり記憶にとどめるように。
クジラの世界。著者イヴ.コア。200ページ。
マッコウクジラの生活について。マッコウクジラの自殺について。マッコウクジラの現状について。
14:05
僕はガウディの建築物のようなその老人ホームの前に立っている。
沢山の深海生物のようなオブジェが建物からはえている。
とても入りにくいし、入ったとして、うまく台詞が思い浮かばない。
僕は何をしに来たと言えばいい?
「クラゲの標本が中にあります。」とか言ってもうまく進むとは思えない。
14:10
中へ入る。
「僕がここへ来た事について。何か心当たりはないでしょうか?」
考え抜いた一言目を僕は言う。
様子をうかがう。老人ホームの方々も様子をうかがっている。安易な二言目は命取りになる。
「もしかしてgoさんの作品の事でしょうか?」
事務の女性がとても困惑した様子で僕に言う。
事態は一歩前進した。
よく見るとレースとエアープランツで出来たクラゲのオブジェが展示されている。
寄生虫博物館の展示物のように美しい。
Jelly fish 作者gO。
その場にいた全員がそれを眺める。その空気から、この数日間、このクラゲのオブジェがここにある事について誰もが混乱してきた様子がうかがえる。そしてこれからどうすればいいのかが僕も含め誰にも分かっていない。
エアープランツのクラゲ一人が行き場を無くしたJelly fishな空気を吸い込んで楽しんでいる。
14:30
何とかそれを持ち帰る。
クラゲの触手に水を与える。
こうして僕のもとへ誕生日プレゼントが届いた。
16:00
世界中の人がこんな気持ちになればいいと僕は思う。
いつか世界中の人をこんな気持ちにさせるだろうと僕は思う。
こんな気持ちを3倍にして音楽家のもとへ返したいと思う。
ありがとう。すばらしいよ。