プール

青い風が吹く下の水面が毎日美しかった7年前、僕はいつも水泳のことについて考えていた。
0.1秒でも早く泳ぐこと以外、数秒の休憩時間のあいだに考える暇は無かった。

僕は何時間も同じような練習メニューをこなしながらも新しい泳法についていつも考えていた。
それは僕の長所でもあり、水泳選手としては短所でもあった。

クロールとかでこれ以上スピードを出すのは無理なんじゃいかと僕はいつも疑う。
バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、クロール。
誰もそれ以外を試みない。
水中にはあらゆる泳ぎ方をする生物がいるし、それらは人よりずっと速く泳ぐ。
でも僕はキャプテンでもあったのでそれは言わない。
言ったとたん、みんな本気で練習しなくなる。僕のように。

小さい頃、水の上を飛ぶように走るボートに乗って長崎へ行ったことがある。

まず僕は水の上を跳ねる小石のように飛び込みからゴールまでホップしたいと試みた。
僕の努力不足かもしれないけど、それはどうしても無理だった。

それでもいつか100m自由形の決勝で、僕だけ100m走のように水面を走り抜けようと思っていた。
泳ぐのと走るのとでは全く世界自体が違うから、たぶん革命的な記録を出すことになると思う。


水泳では不可能だったけど画家になった今、それは可能だと僕は思っている。