|空のドームの中にいて水面にそれが映るので
雲の高さまで水は深い
こわくなるくらいにそれに飲み込まれる|
と僕は書く
夕方の静かな大西洋の沖に向かって僕はカヌーを黙々と漕いだ
漕ぐのをやめると水平線からカヌーまで全てが鏡になった
水が空を映し僕は空の高さに浮いている
とてつもなく広い水であり、とてつもなく広い空でもある
どこからか聞いた事もない動物の声が聞こえてそれがとても不安にさせる
遠くの空が柔らかくゆがみ、音もなく水面を伝ってこちらにやってくる
息をとめたカヌーをゆっくりと揺らし僕の下を通過する
花咲く水槽の真ん中で
中心の木とは何かを確かめる
カヌーを揺らさないように足もとの手帳をそっと手に取る
|ゆるぎなく僕自身はここにある|
と僕は書く
水面が星を映す前に僕は岸を目指した