アトリエ放水

すばらしい音楽を聴いていた。

僕の家の1階が火事らしい。
バーベキューの匂いがする。
大きな消防車がいくつもやってきて消化している。
深刻そうな顔をして人々が避難するのを見下ろす3階で僕は絵を描いている。

「私たちは避難しなくていいの?」
亜矢子が言う。

今は調子がいいのでそれどころじゃない。
それに避難した人から順に事情聴取されているのを見るだけで
とても外へ出る気にはなれなかった。
僕たちを乗せる為のはしご車が待機しているのを確認する。

「石造りなのでなので大丈夫。床が石焼ビビンバみたいになったら靴を履いて外に出よう。」
と僕は言う。

石造り建築の構造と火の燃え広がり方について簡単に説明していると
亜矢子はすでに日本に帰って石焼ビビンバを食べる妄想の中にいたので
あきらめて絵の製作に戻る。

火事でも途切れない集中力で僕は幕間を完成させた。