免許の更新と平和的提案

免許の更新のため、僕は府中にある運転試験場に向かった。
そして僕は毎回のように2時間もの長い講習という罰を受けなければならない。


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「まず、天国と地獄があることを信じて下さい。そうしなければ話は先に進みません。」
とある宗教指導者が僕に言う。

「分かりました。急に信じることは出来ませんが、無いとも言えません。
 話を先に進めたいのであると仮定します。」
と僕は言葉を慎重に選ぶ。

「つまり、そのままではあなたは天国へは行けません。」
とその宗教指導者は言う。

「僕が自分の行きたい方角以外へ行くことはありません。誰にもそれは阻止出来ないし、それに
 僕が地獄へ堕ちるような悪いことをしているとは思えません。」
いつか前に警察にも同じようなこと言ったな。と僕は思う。

「それでも、あなたは天国へは行けません。あなたもあなたの家族もです。」

「分かりました。きっとその考え方だと僕の家族以外にも、僕の信頼するほとんどの人々は天国へ行け ないことになるはずです。
 そして、あなたは次に僕にこう言うはずです。僕の家族や友達も救ってあげた方がいいと。」

「そのとりです。でもそれはあなたの為です。」


「1つ質問があります。あなたは僕や僕の家族が地獄で罰を受けるべき悪人だと思いますか?」
と僕は質問した。

「全く思いません。だからこそこうして救おうとしているわけです。」
とその人は言う。

ありがとう。その気持ちだけでも十分です。


「仕方がありません。僕は地獄に行くことにします。但し、諦めるわけではありません。僕は行き着く 先に納得がいかなければそこに革命を起こしてみせます。どれだけ時間がかかっても必ずです。
 つまり、僕が地獄を意外と居心地のいい場所にする役をひきうけましょう。
 なのであなたももう一度よく考え直してほしい。」

「ありがとう。それは良い提案ですね。」
と言うかもしれないし言わないかもしれない。

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たぶん言ってはくれないのだろうと僕は思う。


目の前では違反者講習が行われている。
僕は運良く窓辺の席を引き当てていつでも逃げ出せる位置にいる。
本気で教えるつもりのない講師と教わる気のない生徒の時間が前回と同じように流れている。
但し、今の僕は絶好調なのでほとんどの景色が何故か美しく見える。
講習所の景色や講師が黒板に記した下手な記号の数々でさえも。
どこかで音楽家があらゆる景色を素敵に変えつづけているからかもしれない。