VOCA展一ヶ月間、ありがとうございました。
時々お客さんに紛れて自分の絵を見ていると沢山の嬉しい会話が聞けて思わず話しかけられずにはいられませんでした。
学芸員さんやショップの方々にお会いするのも毎回とても楽しくて終わるのが凄く寂しいです。
本当にお世話になりました。
VOCA展への出品が決まったのは昨年6月、ちょうど大きなキャンバス一枚に描くことが狭く感じ始めていた時でした。
僕は出品が決まる前からすでにこの絵の左下の一枚を、左下一枚だけで完成させるつもりで描き始めていました。
もし
VOCA展への出品がなかったら、狭く感じている気持ちをごまかしながら僕は長く暗いスランプに突入していたかもしれません。
本当に5回くらいはジャンプしたと思います。
あれくらい嬉しい気持ちになることはそんなにありません。
僕の知らないところで運命は動き続けていて、運命が僕にそれを描くようにと言っていました。
この絵を4倍の大きさに広げることができます。
そう思った瞬間にもうすでに自分が別人のように進化しているのが分かりました。
少し目に力を入れるだけでさっきまで見えなかった景色が溢れ出してきました。
「どうしてこの絵を描いたんですか?」
美術館の鑑賞プログラムに参加していた少年が僕に聞きました。
僕はすぐに答えることが出来ませんでした。
なぜなら僕の絵は全ての箇所を本当に描きたい気持ちで描けるかどうかに命がかかっていて、本当にやりたいことは、どうしてやるのか考える前にすでにやっているものだからです。
「居場所を知ったものたち」を描いた半年間はまさにそういう時間でした。
だから正直に言うと少年に質問された時に始めて僕はどうしてこの絵を描いたのかを考えたのです。
この作品は「正解を選ぶ力ではなく、選んだものを正解にする力」を最大限に研ぎ澄ませて描きました。
描きたいと思ったものは全て、描く訳を考える余地もなく画面に吸い込まれていきました。
「どうしてこの絵を描いたんですか?」
本当に素晴らしい質問です。今ならはっきりとその答えが分かります。
「僕にしか描けないからです。」
目に力を入れると、僕にしか発見されていない景色の一部分が見えます。
僕はそれを早く発掘したいし、早く発掘して人々に見せなければという気持ちが抑えきれないのです。
この展覧会無しに僕はこんなに素晴らしい今日へたどり着くことはできませんでした。
この絵を僕に描かせてくれたオペラシティの野村さん、この絵を最高の形でたくさんの方々に見せてくれた
上野の森美術館の皆様、ご来場頂いた沢山の皆様、本当にありがとうございました。
これからを楽しみにしていてください。
これからもどうぞよろしくお願い致します。