柵の向こう側

柵の向こうには美しい芝生がどこまでも続いている。

「一度でいいから入ってみたい。」
と息子が言う。

「柵にとらわれる必要はないよ。

 でもこれだけは覚えておいて。
 “ほとんどの柵は事故を防ぐためにある。”
 だからその柵の理由が理解できるまでは決して入ってはいけない。
 この場合だとゴルフボールが飛んで来ると危険だね。
 柵の意味が理解できればもう僕たちに柵は必要ない。
 自分に柵が必要かどうかは自分で決めるんだ。」

僕は素早く柵を乗り越えてみせた。

「今は営業してないから大丈夫。ゴルフボールは飛んでこない。誰かを困らせたり悲しませたりもしない。」
と僕は言う。

「でも怒られるよ。」
と息子が心配する。

「地球はみんなのものだと思わない?」
と僕は言う。

「お父さんはいつもそんなことばかり思いつくね。」
息子は柵を乗り越えずに隙間をするりと抜けて僕と手を繋いだ。


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