ドローイング

閃きのホイップクリームをいっぱいに貯めて溢れ出した一滴を作品にする。

今日はまだ溢れ出してはいない。

夜空に花火がドローイングするようにして描けば大丈夫。

そう言い聞かせて今日もカフェの天井に向かって絵を描く。

得意の色彩感覚もこれまでに発明してきた幾つもの技法の数々も今回は使わない。

単純に紺色の線に全部凝縮させる。

「色が奇麗ですね」って僕はよく言われる。
「奇麗ですね」って今度は言われてみようと思う。
何が奇麗なのか仕組みは分からない方がいい。
完璧なマジシャンのように。
そしたら僕はまた目的地へ少しだけ進めるような気がする。

生ビールサーバーがカウンターに取り付けられたので、食事代わりにビールを飲みながらひたすら描く。

いつも溢れ出すまで待つ事にしていたホイップクリームはちょっと搾っただけでいくらでも出てくる。

無限の力を感じる。

一旦全部搾ってみようかとも思う。

全部搾れば520平方メートルくらいにはなるかもしれない。