晴れた秋の散歩

フライドチキンに絶対の自信を持っていたカーネルサンダースは40歳を過ぎた頃ついにケンタッキーになる。
白いスーツに袖を通し、チキンを持って町に出掛ける。

クリスマス1ヶ月前なのでケンタッキーを食べ過ぎた。
突然、経験のある胃の痛みで動けなく無くなる。
救急車を呼びたいけど胃カメラは飲みたくないので我慢する。
ライオンが獲物を消化するイメージで。
こういう時のために僕はライオンの狩りと昼寝の映像を体にしみ込ませている。

「後10年生かしてくれたら今よりもっと凄いのを描いてみせたのに」
死ぬ間際の北斎が最後の言葉を放つ。

目が覚めると新しい毎日が始まる気持ちになっていた。
帰国した直後のように。
その気持ちを大事に壊さないように植物園に行く。
紅葉の木漏れ日と、落ち葉の赤い絨毯。

「自転車の登録番号はありますか?」
「今日はお仕事はお休みですか?」
信号待ちの僕に警察官が話しかける。
「仕事中です。」
と僕は言う。
「ご職業は何ですか?」
今の大事な気持ちを壊すわけにはいかない。
「FBIです。」
重要な任務を背負っている事を遠回しに喩えて僕は去る。

さえずる小鳥達と胃の中の小鳥達と絵の中の小鳥達。
「もっともっと凄いのを描く事が出来る。」
秋晴れの青の中で僕は思う。