アリとキリギリス

亜矢子が幼稚園で子供達にアリとキリギリスの劇をさせると言う事で僕は図書館にイソップ童話を借りに行った。
そのイソップ童話の中で僕は凍死した。
あんまりだ。と僕は思う。
イソップ童話を書き変える事にした。


アリさん達は毎日毎日休まず働く。
キリギリスは毎日歌ばかり歌って全く働かない。
「冬に備えないと痛い目にあうよ。」
アリ達は言いう。
「僕だって冬に備えたい。でも歌を辞める訳にはいかないんだ。」
キリギリスは言う。

冬が来て、アリ達の予告通り、キリギリスは雪の中で凍えている。
指先の感覚がなくなり、手足がついているのかどうかも分からなくなるくらい
骨の芯までキリギリスは冷たく冷たく冷えている。

アリ達は温かな巣の中で蓄えた食料を食べながら何かが足りない事に気がつく。
その何かが分からない事には心までは暖まらない気さえしてくる。
アリ達の心は雪の降る冬、冷たく凍え始める。

キリギリスは力を振り絞り雪の降る音を最後の歌に変える。

「キリギリスの歌だ!」誰かが言う。
アリ達の心が解凍されていく。
「みんなで歌おうキリギリスの歌を。」

アリとキリギリスみんなで大合唱。 

「暖かい雪が暗闇を照らし、不安定な世界を埋めていく。」
ナレーションが言う。

「幼稚園だよ。難しくない?」と亜矢子はでも嬉しそうに言う。
亜矢子は半分却下したけど、半分は採用してくれた。
僕は凍死せずにすんだ。