次の新作について僕は考える。
写真美術館をB1から3Fまで見て歩くけど、美術鑑賞に集中出来ないくらい僕はとても考えている。
ピアノのコンサートを聴きに行く。
青い絨毯に黒いsofa,白い壁と淡いライト、鍵盤の上を弾む指。
ホールにお客さんは8人。
ベートーベン、ブラームス、ドビュッシー考え事をするにはベストの環境。
「趣味でよくこんなに描けるね。」
翼の貯蔵庫の中で近所のおばあちゃんが僕に言う。
もちろん趣味じゃこんなに描けない事を根気強く僕は説明する。
ふとそんな記憶がまぶたの裏に映る。
ゴーギャンが最後の大作に全てを注ぎ、森で服毒自殺する。
趣味などという言葉の影すら見あたらない。
それくらい気合いの入った絵が見たい。
それくらい気合いの入った絵が描きたい。と僕は思う。
僕はまだまだぬるかった。
人生を懸けなければとても描けないような大作をぼくはまだ一つも描いてない。
コンサートホールを出てアトリエに戻る。
今日までの作品の全部を足してもかなわない絵をこれから描く。
まずは美容院へ行って髪を切ろう。