ライオンキング

「甘えるな。行きなさい」
父は容赦なくシンバに言う。シンバは住み慣れた王国を出て旅をする。
月日は流れ、たくましく成長したシンバが王国に帰ってくる。

はすとばらの曲でシンバが登場する。

亜矢子の幼稚園の劇の台本を書きながら、僕は考える。
そこに留まる事でさえ大変な苦労を要したので、そこに留まれる僕はいつも頑張っているような気がしていた。

「見てごらん。この広い王国も世界の一部分なんだ。」
プライドロックの頂上でシンバが言う。

新たな場所に足を踏み出すと見渡す限りが表情を変え、本当に頑張るという感覚を僕に思い出させた。

「そして命は繰り返すのね。」
子供を抱いたナラが言う。
「そして命は繰り返す。」
動物全員で言う。

どうせ同じ時間をかけて乗り越えるなら、出来る限り高い壁がいい。そのために低い壁は壁と見なさない。

子を天に掲げ全員で吠える。力つきるくらい振り絞った大声で。
亜矢子の合図でピタット止める。(息も止める)
無音の美しさの中、幕は閉じる。

ライオンキングの台本の中に僕は僕を集約させる。
劇を見に来た親は我が子に学び、子供達は大きくなって4才の自分に鍵を見付けられるように。

台本を書き上げた僕はライオンのように子羊の肉を食べてまた絵の制作に向かう。