みのむしのためのドローイング

植物園でサンドイッチと紅茶の朝食。
線について考える。
線は色と色の境目にある。
線は空気と空気の境目にある。

川沿いの手すりにみのむしがいくつかぶら下がっていた。
暗闇の寝袋の中で何を思っているだろう。

立ち入り禁止のフェンスを乗り越えると、死んだ工場地帯が広がっていた。
何年も一人で花を咲かせ続けた梅の木の下には数年分の種が地面を埋め尽くしていた。
そのようになりたいようでもあり、そのようにはなりたくないようでもある。
結局どちらも持ち合わせてこそプロフェッショナルだと僕は考えをまとめる。

公園のキノコ型のベンチに座って野球を眺めていると体が動かしたくなってきた。
ゴルフの練習場でボールにゴルフクラブをおもいきり叩き付ける。
弾け飛ぶボールの軌道よりも、手のしびれの方が後に残る。
周囲の大人は淡々と孤独にボールを飛ばす。

夕日の時間に山道を歩いていると、カレー用の器が沢山落ちていた。
その銀色に光る器に植物を植える事にした。

家に帰って灯りを付けると寝袋から出て来たみのむしは眠そうに体を動かした。
新しい寝袋の材料にフェルトを入れておいたのに、
みのむしは暖かいフェルトの上で快適にうたた寝を続ける。

僕も布団にくるまってみのむしと同じ夢を見る。