フェルトペンとの対話

いつものように散歩に出掛ける。

今度、小学校でドローイングの授業をする事になった。
それについて僕はとても考えている。
それ以外についても僕は現在とても考えている。

冷たい風が僕を冷やす。

時間もお金も作品も全然足りない。

僕は何かを掴もうと手を伸ばす。

大事なものはその手の中にあるというのに。

目を閉じれば閃きが星屑のように瞬く。

「僕は閃きの資産家だよ。」僕は言う。

「閃きの春だね。」ミノムシは言う。


(フェルトペンとの対話)

「インクの量は限られている。」フェルトペンが言う。
「心臓の打つ回数は限られている。」僕は言う。
「この限りあるインクで何を描くかが大事なんだ。」フェルトペンが言う。
「明日何をするかが大事なんだ。」僕は言う。
「右に曲がるか左に曲がるか、まっすぐ行くか折り返すかは僕次第。」フェルトペンが言う。
「全てが線だね。」僕は言う。
「君の全てが線になる。」フェルトペンは言う。

とても難しい会話だったので、しばらく僕達は何も言わずに考える。

「人の描いた線をなぞるだけで終わるのは嫌だ。」フェルトペンは言う。
「大丈夫。君の持ち主は僕だよ。」僕は言う。




小学校へドローイングの授業に行く事になった。
僕だってまだドローイングの本質を掴めてないというのに。
まずはこの文章を予習として子供達へ送ろう。

僕は授業中にきっと掴む。