孤独なくじらの物語

深海3000mの戦いを終えてくじらが浮上する。


深海のかけらを口にくわえたくじらがそれを見せると
「どうして深海なんかに行く必要があるんだ。」
カラフルな魚達は言う。

孤独なくじらは一人、深海と地上を行き来する。

ある日、カラフルな魚の数匹が声をかけてきた。
「僕達も深海が見てみたい。連れて行ってよ。」
くじらは喜んで案内する。

ところが200mほど潜ったところで不安が的中する。
「水圧に押しつぶされちゃうよ。」
カラフルな魚達は言う。
「この先に行くには覚悟が必要なんだ。軽い気持ちでついて来られても困る。」
くじらは言う。

くじらは前以上に孤独になった。

孤独なくじらは一人、深海と地上を行き来し続ける。

「僕達は大事なものを海の底に落とし続けて来たように思う。それを君に拾って来て欲しい。」
ある日、カラフルな魚達はくじらに依頼する。
「それは自分で探さなきゃ意味が無い。」
くじらはあっさり断る。

くじらは更に孤独になった上に性格も少し悪くなった。

「自分だけ特別だと思って勘違いしてるんだよ。」
カラフルな魚達はくじらに罵声を浴びせる。



くじらはカラフルな魚達を一匹残らず口に入れると、一気に深海3000mへ潜った。


そして取り返しのつかないほどに一人になった。


夜の散歩。
誰もいない暗い夜道を歩きながら、そのようなくじらになり兼ねないと僕は不安を闇にこぼす。