elevator bird

脳の内で散らばった片鱗をまとめようと神経があらゆる方向へ枝を伸ばす。
僕の左手には大きな水晶の原石が握られている。

水晶は生える。
「竹の子のように?」亜矢子が言う。
「竹の子のようには生えない。」水の発明家は言う。

石が成長するという概念は僕の中で全く新しかった。
僕は全てのものはやがて朽ち果てるイメージの中に生きてきた。
コンクリートも石も人も自然も宇宙も全部。いずれ朽ち果て無に返る。
そこに僕は美を見いだしたりもした。

僕の左手の中でかすかに振動する石が僕を先へ導く。

朽ちた後、いずれ全てのものは結晶になる。
崩壊に要するそれの何倍も長い時間軸の中で。
そう考えたとき僕の頭の中で一つの神経が連結作業を終えた。

僕は儚く無に返るイメージを結晶化させてキャンバス上に咲かせようとしてきたのかもしれない。
宇宙全体の縮図がそこに含まれた時、それは強く世界を振動させる。
電子レンジなんかよりも遥かに強く。

アトリエの雀のヒナが旅立った。
僕は長い間、寂しい気持ちで巣を眺めていた。
巣の下に一粒のダイアモンドの結晶が落ちていた。
日本昔話のように。

そして僕は羽ばたかずともエレベーターのように上へ登る結晶化された鳥の姿を想像せずにはいられなかった。