「本当に海を描くには、毎日 毎時間 それを眺め続けなければならない。
だから僕は同じモチーフを4回も6回も繰り返し描く。」
森の中での個展が2週間を過ぎた頃、モネが僕に言う。
この2週間、同じ森を眺め続けてきた僕へのヒント。
足下に蜂の巣と蜂がセットで落ちていた。
僕はそれをセットで拾う。
「あなたが 毎日 毎時間、同じ場所で眺め続けたのはあなた自身の姿ではないでしょうか。」
僕もお礼にヒントを言う。
手のひらにのせた小さな蜂の巣と、蜂の死骸を僕たちは眺める。
その巣のまわりに生えていた巣よりも遥かに大きな木々を僕はもう思い出せない。
「ここを花咲く水槽の真ん中にしたい。」
僕とモネは言う。
いつだって僕たちには深い海の底でじっくり考える時間がある。
「水圧の隙間でなければならない。」
音楽家が言う。
僕とモネが同意する。