僕の水槽

福岡の展覧会へ作品を送る。

「美術作品は弁償出来ないのでお取り扱い出来ません。」

アトリエに荷物を引き取りにきた運送屋さんが言う。

とっさに品名のとこに(水槽)と書き込む。

「魚も入っているのであまり揺らさないようにお願いします。とにかく丁寧に。」

うまく喩えることが出来た僕は調子に乗って付け加える。

運送屋さんが大きな水槽と中で脅える魚をイメージしながら、

とてもとても丁寧に作品の入った箱を3つ運んでいった。

福岡に着くまでの間、僕の絵画は水槽を完璧に演じきることがきっと出来る。

福岡で再会してからは、水槽そのものになるわけだからね。

比喩的に水槽を運ぶとても安全運転なトラックを見送る。

冬が来て、寝返りのたびに冷たく冷えた枕が気持ち良いので、

僕の頭はとても冴えている。