空白の天気雨

国会で突然アーティストトークをするくらい覚悟が必要だった。
表彰式。
政治家あいさつ。
エイズ財団代表あいさつ。
審査員あいさつ。
そして僕のアーティストトーク
国会で突然アーティストトークをするくらい革命的だった。


早い時間の流れが終わり、急な空白が一日を満たす。
空白へ一ヶ月間の記憶が流れ込む。
やることが沢山あるようにも思えるし、何一つ無いようにも思える。
外を見ると天気雨が降っていた。
ちょうど今の僕の内側みたいに。
日の光と雨の両方を楽しみながら散歩へ出掛けることにした。


パリの友達の新作を見に行く。大切な感覚がそこにはあった。
名曲喫茶で一人反省会を行う。
ベートーベンを聴きながら僕が考えていたのは、過去の反省でもなく、未来の計画でもなく、
次の作品についてだった。
道玄坂のギャラリーで水槽について話す。
「ここを水槽にして下さい。」
僕は依頼される。
1月の個展が決まる。
と同時に僕の空白が終わる。


「カエルのミイラにぴったりのケースを見付けました。」
朝7:30、世田谷美術館で出会ったおばちゃんからの電話。
ついでに他の何かのミイラも箱に詰めて送ってくれるらしいけど、
僕は寝起きでそれが何なのか聞き取れなかった。

「過去に今を計画するよりも、未来に今を振り返るよりも、
多分とても大事な今のまま僕はここにいる。」
カエルのミイラが僕に言う。