透明の開封

公募展の一角に、僕たちの水中庭園はある。

毎日沢山の人が美術館へやってくる。

人々は突如、水中へ潜ることになる。
散歩中の人も公募展の出品者も審査員も学芸委員も主催者も警備員も全部。
「こちらへどうぞ。」
僕は透明な入り口を開封する。


そして僕は僕の作品が誰かと出会う場に立ち会う。


何故これがここにあるのかという疑問を、ここへたどり着いた喜びが超えなければ
僕は画家としての命を奪われる。


生まれたての月のように大きく開いた鑑賞者の瞳の中に、
宇宙の縮図のように僕の絵画が映る。


小さな世界は大きな世界の縮図となる。


「透明の開封世田谷美術館 11.2 (sun)まで。