シマウマの導く方へ

朝ミリアムが部屋の扉をノックする
ミリアムが僕を部屋に呼びに来るような事はこの一ヶ月間なかったので何か重要な用事があるのだと思った
話しを聞くと一階に何か手紙のような物が届いているらしい
ただ手紙とは言わなかったのでそれが会話をとても混乱させた
手紙はここへは送らないように言っておいたはずなのに

一階の扉を開けるとなつかしいシマウマが立っていた
それは全く予期せぬ出来事だった
こんなとこまでこれがやって来るなんて

ただお腹の閉じ方が音楽家のそれとは違う
ブリアンデカナエのたたずまいをそれに感じる
ブリアンデカナエとは3年前のパリで僕に本物のサプライズを教えてくれた人物でそれ以来僕は毎年音楽家にサプライズを仕掛けるようになり音楽家との間で極限に高められ今に至る
先日も彼女は僕のために中世の古城を貸しきり大変なサプライズを成功させたばかりだった
あの二人が手を組んだとしたら僕は大変な事になる
でも二人が出会う方法は思い当たらない
考え過ぎだと僕は思い直す
シマウマの背後でパリの朝があわただしく一日の始まりを駆け抜けていった

部屋に戻って勿論お腹を割る
メモが入っている それとキャンドル一本
不思議だったのが先日僕が作品で使った道ばたに落ちていたキャンドルと同じ物が入っていた
あの日僕はキャンドルを拾っても拾わなくてもどちらでもよかった
どう考えても思考は迷宮入りした

全てはシマウマのお腹の中に書かれた場所
一時にそこへ行けば何かが起こる
お腹の中から湧き上がる振動が僕を巨大な冒険の中へ誘っていた

一時までにまだ時間はたっぷりあったので僕は考えるのを止めてシャワーを浴びてコーヒーを飲んだ
何時も通りの教会の鐘と何時も通りの鳩の声と何時も通りのパリの朝
ただシマウマだけが特別な違和感を放っている
そして僕はhappy birth dayのオーラを身にまとい勢い良く歩き出す
シマウマの導く方へ

見知らぬ土地でしかも言葉もうまく通じない土地で暗号を解くのは容易ではない
ただし今日は僕はとてもhappy birth dayな人であったので街を歩く全ての人はやさしく僕と一緒に暗号の解読してくれたし街を歩く全ての人は怪しく見えた

一時 指定の場所
女性が現れる
手にイカのカラーコピーで出来た封筒を持っている
この時確信した
やっぱり音楽家が何処かで指揮している
でもここはパリ そんなはずは無いけどそれしか考えられない
封筒をあけるとまたメモとキャンドル
17時半にまた別の場所

15時半にそこにたどり着く為僕は本当に本当に苦労した
もう止めて帰りたいとも何度も思ったし音楽家に電話で聞こうかとも何度も思った
だけどその行為は敗北を意味したし仕掛けるのはもっと難しかったはずだし
それは絶対に許されなかった
僕が限界に行き詰まると聞いても無いのに通りすがりの人が道を教えてくれたりもした
その度に僕はシマウマの背後に視線を感じた

そして僕はあの庭にたどり着く
花咲く庭で僕は何かを待つ
とても気持ちのよい庭だったので僕はヨガの体操をして待つ事にした

一人の男が歩いて来る
:ここはプライベートガーデンです 出て行って下さい:
男は言う
僕は自信を持ってメモを見せる
;全てgOの指示です;
僕は言う
;それは確かにこの場所です でも出て行って下さい;
あんまりだと僕は思う
でも僕は出て行かない
言ったん出てまた戻る
全てが音楽家に仕組まれているとしたらそこで出て行くべきではなかったし
何よりも今日は僕の誕生日だった

17時半 また別の男がやって来る
さっきより少し若い
;ここはプライベートガーデンです 出て行って下さい;
また同じことを言っている
そこで僕はやっと気付く
これは堂々と入るパターンではなくこっそり忍び込むパターンだった
海外でこのミスは命取りになる

それでも僕は三度目の侵入を試みる
すばやく庭のマリア像の影を調査する
箱が出て来る
中からイカのオブジェ
HAPPY BIRTH DAY

もはや何がどうなっているのか全く分からない
シマウマのは背後に感じた巨大なイカの目が箱の中からこちらを見ている
とにかく僕はhappy birth day
今日一日を作ってくれた音楽家と世界中の人々に向かってありがとう


僕は謎を解くのを止めて亜矢子とワインを開けて静かに祝う
玄関のベルが鳴る
;たまたま近くを通りかかりました;
次々に仕掛人達が僕の家の前を通りかかる
全部で11人
手に料理やケーキやプレゼントを抱えて