海辺の質感

余力を残して危険な道路で寝ているセミを空に投げながら歩く。
不時着した場合には急いで拾いに行って安全な場所にとまらせるので
この季節の散歩は暑いうえになかなか前に進めない。
一旦セミのことは忘れて前へ進もう。


|フローリストとの打ち合わせ|
花屋なのに花がない
石畳の店内には大きな生け花みたいなのがフローリストの分身のように一つあるだけだった。
商品のような物が全く見あたらない。
そのフローリストにとって何が大事なのかを僕は一瞬で理解した。

楽しい打ち合わせ中、フローリストに一件の電話が入る。
宅急便が乱暴だったため花束がびっくりするくらいぐちゃぐちゃだったらしい。
「花が枯れても続きがあるように、花束に種を埋め込みましょう。」
少し落ち込んでいたフローリストに僕は言う。
そういうわけで僕は蝶チョのカラーコピーや様々なアイデアを今後ここで試すことになった。


僕はクーラーから出た水を貯めて一度に流す。
ベランダに打ち寄せる波のイメージで。


ベランダが浜辺の質感になる。
鍾乳洞の床のようでもある。