出雲の山の奥深く。
廃屋のような神社。
茶室のような小さな部屋の紫色の座布団の上。
失礼の無いようにと緊張した僕は背筋を伸ばして正座している。
華やかな祭壇の一番奥には丸い鏡が一つ置かれている。
「リラックスしてください。
ストレスを感じればあの鏡はあなたに容赦なく苦痛を跳ね返してきます。」
既に帰りたくなっている僕を見抜いた神主が言う。
古事記を読んだ結果、
わけあって此花咲耶姫に伝言を頼むために僕はここにいる。
「そういうわけで僕はここに来ました。」
僕はここに来た理由を説明する。
「それは本当に素晴らしいことです。」
神主は言う。
ここまでが間違ってなかったことに僕はほっと胸を撫で下ろす。
「自然は緊張していません。かといってだらけているわけでもありません。」
と神主は最初のセリフを自分の言葉で言い直す。
僕も正座をやめていつものように組んで座り直す。
表面だけ綺麗な形だけの儀式などやっても意味がない。
僕と神主の意見が一致する。
その後が凄かった。それを話すことは禁じられていて、
僕がそれを守るくらい凄かった。
透明な鈴の音が鳴り響く。