野苺

久しぶりにスーツのジャケットに袖を通すといくらか背筋もいつもよりちゃんと伸びて
いつもより大事な用事を果たす為に歩く僕は道路脇に生えた野苺を一つつまむと
持ってきた作品に加えた。
野苺の赤は作品と見事にマッチして、今日はうまくいく。と僕は思う。




2人のマネージャーはそれぞれフランス語や英語や日本語を手際良く僕に通訳してくれる。

彼女達が登場して以来、僕は飛躍的に作品制作への集中力を高めることが出来ている。

そして僕の代わりにプレゼンにも行ってくれる。

僕は自宅で待機。

最初の段階で僕が行くとだいたい話がややこしくなる。

僕には世の中の常識は通用しないかわりに僕の常識も世の中には通用しない。
つまりそちらの通訳の方が難しい。

けれどもちょうど彼女の誕生日でもあったので、結局僕は自宅待機せずに

僕は僕でサプライズのプレゼンをしに事前に同じ場所へ行くことにした。

「30分後にこういう人が来ますのでこれを渡して下さい。その人は僕のマネージャーで誕生日です。」
僕はさっき拾った野苺とプレゼントの作品を見せる。

「ではそれを展示して待つことに致しましょう。」
初対面のその人はとても親切に協力してくれた。

僕は自分自身以外のプレゼンはだいたいうまくやる。

こうして僕の作品はたぶん一石二鳥の役割を果たすことになった。


マネージャーがいるおかげで僕はこういうことにもこれまで以上に力を注ぐことが出来る。
本当にどうもありがとう。お誕生日おめでとう。


今日の野苺と同じように 僕はただ自然にあるべき場所にあれば良い。