雨。
部屋干しされた洗濯物の清潔な洗剤の匂いで部屋は満たされている。

連日の雨で僕は森の散歩が出来ずにいる。

ジョギングをする人たちとすれ違う朝の森を思い浮かべる。
そのたびに僕も走りたいと思う。
僕の身だしなみは走るのに適していない為いつも走らず歩く。

この服装で走ると急いでいるか又は慌てているようになる。
僕はその自分の姿を許す事が出来ない。
僕には急ぐ理由も慌てる理由もない。
ディズニーランドで着ける意味がよく分からないミッキーマウスの耳のかぶりものを無理矢理装着された場合によく似ていると思う。



傘が盗まれた。
傘と自転車は買うものではないと僕も思うので大丈夫。

雨に打たれる時間を少しでも短くする為、僕は久しぶりに走ろうと思う。

落ちて来る雨を見ながら、念入りにストレッチを始める。
普段動かさない関節の隅々に血液が行き渡っている事を確認する。
今この瞬間に落ちて来る全ての水滴より早く家についてやろうと僕は思う。
僕はゴール地点である僕の部屋を思い浮かべる。


部屋の中は洗濯物の清潔な匂いで満たされている。