天井の外側

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亜矢子から咲哉が出て来て4ヶ月になる。


久しぶりの涼しい朝、僕はベビーカーを押しながら多摩湖を一周している。
突然人が一人存在した事について
僕は何かを掴めそうでいて掴まないようにもしている。


ベビーカーの中の咲哉はひたすら仰向けで上を見ている。
つられて僕も上が気になる。
空が大きい。
東の空でもなく西の空でもなく地面と対になって一枚の空として上を囲んでいる。


バクテリアの研究から話はつながって、
赤煉瓦の洋風な建物内。
科学者達と宇宙の外側についてディスカッションする機会を得た。


僕の頭の中の先端が言葉に触れる。


バスタブに身を沈めた後で石けんが残り少ない事に気が付いた。
このままでは僕にとっての大事なお風呂の時間が台無しになる。
小さくなった石けんをこねながら僕は宇宙の外側とバクテリアの関係性について考えている。


手の中で石けんはいくつもの小さな咲哉になっていた。
お風呂から上がるともちろん本物も仰向けになって天井を見ていた。


プラネタリウムに咲哉を寝かせる。
天井ばかり見つめる彼に僕からのとっておきの天井のプレゼント。
ナレーションの声とともに館内が闇になる。
咲哉が大声で泣き出す。
僕たちは退場させられる。


僕たちは宇宙の外側への扉を開けた。